山の天気とは。低い山でも凍傷は起こる。 |
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低い気温による障害には低体温症の他に凍傷(frostbite)があります。 低体温症が体温の低下による障害なのに対し、凍傷は手足などの局所の障害で 身近かな所では「しもやけ」もその内の一つです。 凍傷は寒気に曝されて起こるのですが、メカニズムに2種類あります。 一つはからだの組織が凍結して細胞が壊されるもの。 もうひとつは、寒さのために抹消の細い血管が収縮し血液の流れが悪くなり血栓を起こすもの。 後者の場合には必ずしも気温が氷点下でなくとも凍傷は起こります。 山での事故により凍傷で手や足の指を失った有名な登山家の話はよく聞きます がほとんどはヒマラヤやアルプスでの話で、国内では厳冬期の剣や穂高での出 来事のように感じます。 実際、以前テレビのドキュメンタリー番組でエベレストの上部(標高は忘れま したが)でアイゼンを着ける時にうっかり素手で触ってしまいきつい凍傷にな ってしまった場面がありました。 そんな事やらで「しもやけ」以外の凍傷はマイナス20度位の所へ行かない限 りは余り縁のないものと思っていました。 ところが1000mそこそこの山で凍傷になってしまった事があります。 場所は私の住んでいる大阪東南部と奈良県の境にある「金剛山」という標高1 125mの身近かな山です。 時期は年間で一番寒い2月の初めころでした。 強い寒気が流れ込んだ後で高気圧に覆われ快晴の天気でしたが、放射冷却も加 わり山頂付近で気温は−8℃ぐらいでした。 売店で熱いスチール缶の甘酒を買い展望台で大阪平野の景色を眺めていました。 ちょうど甘酒が熱くて手を暖めるのに最適でした。 あまりの景色の綺麗さに飲み干した缶を片手に暫く我を忘れて眺めていました。 その後、下山を始めて暫く経った時、突然耐えられない痛みが左手を襲いまし た。 歩くのもやっとの状態の痛みが続きましたが、とにかく下山しなければ病院に も行けませんので我慢して歩きました。 登山口まで辿り着いた時には痛みは我慢できる範囲におさまっていました。 左手を見てみると握った缶に接していた人さし指と親指の間が白く変色し堅く なっていました。 飲み干した空き缶が気温と同じ−8℃位に下がっていたのを忘れて握っていた ため接していた皮膚が凍ってしまった様です。 その後元に戻るまでに3ヶ月程かかったように記憶しています。 |
旅行写真 |