グリーンランド紀行 |
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皆さんはグリーンランドってご存知ですか。世界地図の右上端か左上端に載っている、氷の島です。全島の80%は、厚い氷で覆われていて、その氷床の厚さは、平均1500m以上というから驚きです。島の中央部では年間平均気温マイナス30度。ブリザード(雪混じりの強風)が吹きすさぶ、無人の地です。人間が住めるのは、海岸線にあるフィヨルドの斜面。氷河で削り取られた深い谷の斜面は、強風が少ない。日本の6倍程もある世界最大の島なのに、人口は5万人程度。本来の住人はエスキモー(イヌイット)ですが、18世紀になって、ヨーロッパ人も定住しました。 日本との時差は11時間。今回の旅では、英国航空で、成田からロンドンへ、そこでアイスランド航空に乗り換えて、アイスランドのケプラヴィーク国際空港へ。翌日はレイキャヴィク国内空港から、エア・アイスランドのプロペラ機でグリーンランドのクルスク空港へ。でも、此処はまだ、空港のための島。本土ではない。さらに、ヘリコプターに乗り換えて、アンマサリクへ。ここで、やっとグリーンランドの地に足を踏み入れた。天気が悪いと、ヘリコプターは飛ばない。運が悪ければ、クルスク空港に足止めである。幸い、我々は好天に恵まれ、グリーンランドの地を踏むことが出来た。感激である。ヘリコプターはほんの10分間だが、見える景色は抜群。この10分間で、2日間の旅は報われたと思った。 アイスランドはデンマークから独立した国、グリーンランドはデンマークの自治領。そんな関係があって、この2国間には、今でも、パスポート審査がない。アイスランドからの飛行機も国内線扱いである。クルスク空港の売店では、頼むとパスポートに、グリーンランド入国のスタンプを押してくれる。 グリーンランド東海岸、最大の町・アンマサリク、といっても、人口は4000人に満たない。フィヨルドの北向きの斜面の底に、張り付いた町である。なぜか、フィヨルドの南向き斜面には家がない。風向きの関係だろうか。 我々の宿泊地は、街で唯一のホテル。エア・アイスランドの経営だが、夏だけの施設なので、内部は、隣の部屋の音が筒抜けの安アパートである。 小さな町であるにも拘らず、立派な2階建てのスーパーマーケットがあった。電気製品や洒落た婦人服から食料品まで、何でも揃う。東海岸で唯一のマーケットとして、重要なのであろう。物価は日本の2倍くらい。獲れた魚を、外国の港で売り、生活必需品を輸入する。どうやらそんな生活パターンらしい。 食生活は、ホテルの食事でも貧しい。干肉とジャガイモ。新鮮野菜はなく、すべてが冷凍野菜。日本のように凝った料理は望むべくもない。野菜は生育しないので、タンポポがビタミン源とか。町の郵便局の前で、屯している現地人を見かけたが、社会保障制度が行き届いているせいか、治安は良い。日本の漁村とさして変わらない位に、安全である。ここには、貧しいけれど泥棒はいない。でも、文明化についてゆけず、自殺する男性も多いという。 グリーンランド2日目は、まず約3時間にわたる氷海クルーズ。フィヨルドの外まで、100トンくらいの小船で出て、いろいろな氷山の浮かんでいる様子を眺める。重装備の厚着でも、身体が冷え切ったが、思いがけない、素晴らしい体験であった。 グリーンランドで見られる氷塊には3種類ある。 第一はPOLARアイスと呼ばれる、北極で出来た氷。厚さは4−5メ−トルで、塩分は海水よりやや薄い。空気の含有量が少ないので、黒っぽく見える。形は平べったいものが多い。北極で4−5年かっかって出来上がり、南に流れてきたもの。 第二はICEBERGSと呼ばれる氷河の氷。グリーンランドの氷河から崩れ落ちた氷塊である。上部は雪なので、空気の含有量が多く白く見える。しかし下のほうは、圧縮されて空気が少なく、半ば溶けた水のせいで、青く澄んで見えることがある。 第三は、FAST氷と呼ばれる一年ものの氷。グリーンランドの岸辺近くで凍ったもので、春になると溶けて行く。僕達の旅は夏なので、これは見ていない。 しかし、第一か第二の氷塊と、第三の氷塊が合併して、PACK氷塊と呼ばれることも多い。 大きく揺れる船の中で、カメラを手に、歩き回ったら、船酔いになりそうになって、後半は静かにしていた。 2日目の午後は花の谷のハイキング。 深く刻まれたフィヨルドの中の、北向き斜面の中を、谷川が西から東に流れる。その谷川に沿って出来た南向きの斜面には、日が良く当たる。そこが花の谷である。極北の地の短い夏に咲く花達は、まさに百花繚乱。谷川に沿っての約3時間のハイキングは、この旅行の、もう一つのハイライトであった。まずは、このアルバムに載せた花達の素顔を見てください。デンマークから夏休みで来た、エコガイドのお嬢さんから、それぞれの花の説明は聴いたけど、花の美しさに気をとられて、全部忘れてしまった。 グリーンランド3日目は今までにない快晴。出発のヘリまでは、時間があるので、娘と二人で、ホテルの裏山に登ってみることにした。その頂上からは、昨日の氷海クルーズで見た、氷塊が見える。晴天なので、氷塊は美しく輝いていた。昨日のどんよりした光で見るのとはまた違った風情。快晴になると虫が多い。ゆっくりとしたかったが、虫除け網を持っていなかったので、早々に退散した。 クルスクの飛行場とアンマサリクの間のヘリは一台しかない。ヘリは最大9人乗りなので、我々ツアーグループ11人は、先発組と後発組に分かれる。我々先発組5人は、クルスクの空港に到着したものの、後発組が到着するまでには、一時間近くある。近くに見える氷山まで、歩いてみることにした。空港の土手を滑り降りて、岩原を歩く。道はない。近くに見えていた氷山だが、行けども行けども近くならない。岩原は、結構起伏も多い。低いところには、小さな流れがところどころにある。草が生えているところに踏み込むと、ふわっと沈み込む。どうやら凍土が溶けて、隙間が出来ているらしい。結局時間切れで引き返すことにした。でも、この散歩、「溶けた凍土の上を歩く」という貴重な感覚を味わった。 後発組が到着して、弁当を食べたあと、今度は右手に見える氷塊の近くまで、皆で行ってみることになった。こちらは道がある。今度は氷塊の傍まで行けた。遠くから見ると小さな氷塊でも、近くによると意外に大きい。それが我々に距離感を失わせる原因らしい。 レイキャヴィクから2泊3日の短い旅であったが、まずまずの天気に恵まれ、グリーンランドの旅を無事終えることが出来た。エア・アイスランドのパンフレットにも、アンマサリク行きのヘリはお天気次第と書いてあり、また、急病人が出たときなどは、ヘリをそちらにまわすので、観光客は足止めらしい。 ヘリコプターには不確定要素が多いので、日本からのツアーの中には、何もないクルスク往復だけというのもある。でもそれでは、何のためにグリーンランドに飛んだのかわからない。是非、アンマサリクを訪ねてください。ちなみにレイキャヴィクからの、アンマサリク2泊3日コースは、宿泊代と食事込みで、99400ISK=アイスランドクローネ(約20万円)。クルスク往復日帰りコースは50440ISK(約10万円)です。 |
旅行写真 |
氷海 No.1 |
晴れの日の氷塊 No.2 |
雲の間から No.3 |
流氷 No.4 |
裏山より No.5 |
氷山の履歴 No.6 |
氷山の転覆 No.7 |
氷塊の吹き溜まり「遠... No.8 |
氷塊の吹き溜まり「中... No.9 |
氷塊の吹き溜まり「近... No.10 |
村で唯一のホテル No.11 |
村の全景 No.12 |
アンマサリク No.13 |
集合住宅と湿地帯 No.14 |
花の谷 No.15 |
花の斜面 No.16 |
花の競演 No.17 |
花の谷より(1) No.18 |
花の谷より(2) No.19 |
花の谷より(3) No.20 |
花の谷より(4) No.21 |
花の谷より(5) No.22 |
花の谷より(6) No.23 |
花の谷より(7) No.24 |
花の谷から(8) No.25 |
花の谷から(9) No.26 |
花の谷から(10) No.27 |