コスタリカ紀行 |
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映画「ジュラシック・パーク」の撮影をした所だというので、行ってみることにしました。ジャングルを想像していたのですが、実は、よく手入れされた庭園。ちょっとガッカリでしたが、それなりに面白い経験もありました。 1)モンテベルデ保護区 2月7日成田発、マイアミで1泊して、サンホセから車に乗りついで、目的地のモンテヴェルデ保護区に着いたのは2月8日の夕方。翌朝早く、火の鳥のモデルといわれる、幻の鳥「ケッツアル」を探しに出かける。といっても、ケッツアルの森は、アメリカから移住した清教徒の私有地。入場料を払っての、トレイル散策である。ケッツアルは、トレイルの入口付近に居た。此処にケッツアルが好む木が植えてあるらしい。でも非常に高い木なので、下からは、望遠鏡でしか見えない。観光案内には、綺麗な鳥の写真が出ているが、木陰の中の鳥は、そこまでの美しさはない。チョットガッカリである。 午前中の熱帯雲霧林の散策では、寄生植物の多さに目を奪われる。鬱蒼とした密林では、光を求めて、植物は上へ上へと伸びてゆく。しかし上に伸びてゆく能力のない植物は、上に伸びてゆく木に寄生する。 寄生植物の極め付きは、絞め殺しの木。大木の樹上で発芽したつる性の植物は、下に気根を下ろし始める。気根は大木を巻きながら、何十メートル下の土に根を下ろすと、急速に成長をはじめ、大木を覆って行く。絞め殺しの木に、光を覆われた大木は、やがて枯れ、絞め殺しの木だけが生き残る。中国では、この絞め殺しの木のことを、金持ちの老人に絡みつく若い娘という。絡み付いて、精を吸い取り、やがては本体を乗っ取る状態が、よく似ているからであろう。 でも若い娘に絡みつかれて、死ぬのなら、それも本望かも。 午後は、熱帯雨林の谷に架かるつり橋をわたりながら、木々を上から観察する。つり橋は10以上あっただろうか。熱帯雨林の木々が競合しながら、上に伸びてゆく様子がわかって面白い。 コスタリカは火山国で地震国。カリブ海と太平洋に挟まれた、中央高地を持つ地形は、日本海と太平洋に挟まれた中央高地を持つ日本と、どこか似ている。冬の北陸には、日本海から来る冷たい風が、中央高地にぶつかって、雪がふる。コスタリカ東部では、カリブ海の湿った空気が、中央高地にぶつかって、熱帯雨林を作る雨を降らせる。その反対の西側は、比較的乾燥している。コスタリカは大陸につながっているが、大陸性気候ではない。東西に海を持つ島国といったほうがいい。そして、カリブ海から、太平洋に向かって、風が流れてゆく。モンテヴェルデはその風の通路らしい。密林の谷を吹き抜ける風音は、木霊して、まさに嵐のよう。でも外にでてみると、音ほどではない。モンテベルデには2泊したが、2晩とも、嵐を思わせる風音が子守唄になった。 2)アレナル火山とタバコン温泉 火山があるところには温泉がある。タバコン温泉は、そんな温泉の流れている川。その川の周りに、熱帯植物を植えて、綺麗なムードにしたのが、タバコン・リゾート。水着を着て、それぞれ好きな場所の、小川に入る。水温は38-40度、流れているので、やや熱く感じる。この小川の温水を引いたプールが10箇所ほど。プールの中には、バーもある。日本では、ちょっと考えられない贅沢な、露天風呂である。 フォルトナのアレナル・ビスタはアレナル火山を正面に望む滞在型のロッジ。僕の部屋は山の中腹の二軒長屋。女子学生二人組と小生が、元気組なので、一番上の部屋迄山登り。その代わり景色は最高。名も知れぬ鳥達が、歓迎の挨拶をしてくれる。 でも、このロッジ、シャワーはあるが、お湯が出ない。仕方なく、ちょっと冷たいが、水浴びをして、夕食に出かけたら、皆さんがお湯が出ないといって騒いでいた。現地ガイドが、ホテルに掛け合っているのだが、全く埒があかない。話から推察すると、ロッジのシャワーは、お湯の栓を開くと、それを水流計が感知して、瞬間湯沸器のスイッチが入り、お湯が供給されるシステムらしい。しかし、上のほうのロッジでは、水圧が低く、水の供給がチョロチョロなので、瞬間湯沸かし器のスイッチが入らない。また、仮にスイッチが入ったとしても、水流が弱まれば、瞬間湯沸器の過熱を防ぐための安全装置が働いて、スイッチが切れる。このシステム、エネルギー節約のための、なかなか良いシステムである。でも、どうやら先進国のエンジニアが、「公共水道の水圧は、変わらない」という前提で設計したのではないかと思う。今は乾季、水圧も低くなっているのであろう。問題解決のためには、水圧を一定に保つための補助ポンプをつけてやればいい。この推論、現地ガイドに伝えたところ、彼が得意げに、ロッジの担当者に伝えていたようである。でも、乾季に来る日本人客のためにだけ、補助ポンプの投資を考えるかどうかは、疑問である。現地の気温からすれば、水シャワーでも十分なのだから。 3)カニーニョネグロ保護区 2月11日は、フォルトナ近郊のカニーニョネグロ保護区まで日帰り遠足。川舟で岸の動物達を観察する趣向。でもガッカリなのは、この保護区は川の両岸50−100メートルくらいだけ。あとは牧場地帯が広がっている。箱庭の中のジャングルである。 それでも、水上を走るみどりのトカゲ、日向ぼっこをする小さなカイマン鰐、樹上で昼寝をしているホエザル。餌を求めて移動する白い顔のサルの群れ、など面白いものを見た。 途中のトイレ休憩のレストランの裏庭には、陸イグアナが住んでいる木があったり、ガソリンスタンドの脇には、怠け者の住む木もあった。人家の近くには天敵が少ないのだとか。 4)トルトグェーロ保護区 トルトグェーロへ行くには、水路しかない。道路の終点から30人乗りくらいの平底船に乗る。カリブ海と平行に走っている水路は、両岸を熱帯雨林に囲まれて、なかなか素晴らしい。 今まで晴天続きだったのに、雨が降り始めた。ロッジについた頃には、かなり激しい雨。観光はウミガメ博物館と付近の村。雨の中のお出かけは遠慮して、ロッジで休むことにした。これは大正解。雨音を聞きながら、ベッドに寝そべり、外を眺める。このロッジは、虫除けの網が張ってあるだけで、ガラス戸はないので、風が通り抜けてゆく。湿度は120%、通り抜けてゆく風に霧が混じる。机の上に置いた紙が、瞬く間に湿る。屋根はトタン張り、雨音と風音がすごい。熱帯雨林の雰囲気を十分に堪能する。今回の旅で、最も素晴らしかった瞬間である。 5)終わりに 北アメリカと、南アメリカはまったく別の大陸。それが、火山活動の結果、二つの大陸の間の島が繋がって、大陸を結ぶ道が出来た。コスタリカは火山国で地震国。カリブ海と太平洋に挟まれた、中央高地を持つ地形は、日本海と太平洋に挟まれた中央高地を持つ日本と、どこか似ている。伊豆から海嶺をたどると、小笠原諸島に着く。同じように、コスタリカから海嶺をたどると、ガラパゴス諸島に着く。今回の旅行は、小笠原の海を見てから、伊豆の海に行くようなもので、ガラパゴス諸島を楽しんだあとでは、コスタリカは箱庭に思えてしょうがない。 まあこんな国が、中米にあるということを知ったのは、収穫だが、お勧めの旅行先とは言いがたい。動物は遠くからしか見れないないし、植物は園芸種が多い。近くで鳥や動物が見られたガラパゴスとは格段の差である。 コスタリカが、非武装中立国であることは始めて知った。でも、法律的には、憲法9条の方が、より完全な戦争放棄だという。この国が軍隊を廃止したのは、軍隊によるクーデターを防ぐためとか。なるほど卓見である。 |
旅行写真 |
寄生蘭 No.1 |
酸素マスク No.2 |
コロンの花 No.3 |
下から見た巨大羊歯 No.4 |
上から見た巨大羊歯 No.5 |
チーナ No.6 |
スカイウォーク No.7 |
アレナル火山 No.8 |
岸辺の森 No.9 |
水上を走る蜥蜴 No.10 |
カイマン鰐 No.11 |
寄生蘭に占領された木... No.12 |
ジャングル・ロッジ No.13 |
岸辺の花 No.14 |
不思議な石器の球 No.15 |