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アンカラ空港から夕焼け空
アンカラ空港から夕焼け空

タイトル  アンカラ空港から夕焼け空
目的地 アフリカ・中東 > トルコ > アンカラ
場所 アンカラ
時期 1991 年 8 月
種類 景色
コメント アンカラ空港を離陸する時分には、キャンバスに描かれたような夕焼け空はすっかり黒い幕で覆われていた。
 シートに身を沈めると、今日の行程で全身が麻痺したかのように弛緩に陥り、うとうとと眠りはじめたようだ―――。

 ネブシェヒルのレストランからバスは一気にアナトリア高原を走破してきた。
国道73号線を西へ進み、アササライ郊外より分岐したE5(国道1号線)を北上する。
E5はロンドンからブリュッセル、ウィーン、ブタペスト、イスタンブール、アンカラを経由して、シリアのアンタキア(古代都市アンティオキア)まで結ぶ、ヨーロッパの幹線道路の一つだ。
アンタキアからさらにアフガニスタン、パキスタン、さらにインドへと結ぶ現在のシルクロード、アジア・ハイウェイに繋がる壮大な道路交通網である。
E5を北上すること50キロほどで湖水が見えてくる。
トルコで2番目に大きいトュズ湖だ。
この湖は名の通り塩(トュズ)水湖で、照りつける太陽に湖の水面は干上がり、しかも白く濁っていた。
中央アナトリアは年平均降水量が300ミリと少なく、半砂漠気候地帯である。
猛暑の夏ともなると、塩の固まりが流氷のように湖面を覆うことも稀でないらしい。
トュズ湖を過ぎると、荒涼たる平原が続くのみであるが、ときたま糸杉やポプラ並木が街道沿いにあり、わずかな緑だが心なごませてくれる。
木々があるところには、たいてい村がある。
そして村落の数だけ、いやそれ以上にモスクがある。モスクは鉛筆のようなミナレットがあり一目瞭然だ。
 空港に着き、ユルギュップのホテルの同室者を誘い、空港内のレストランで早めの夕食をとった。
レストランは広く客はまばらであった。
片隅にバーコーナーがあり、壁から吊るされたテレビでサッカー中継を流しており、そこだけひとだかりで騒々しいが、時間は緩やかに淡く夕暮れどきを刻んでいた。
食事はパプリカとトマトを煮込んだシチューとおなじみのシシケバブにした。
羊を串焼きにしたこの料理は、中央アジア、アラビア半島から北アフリカまで共通のご馳走だ。
トルコではドネルケバブと呼ぶ。
白ワインを注文すると、空港内の食堂風のレストランだというのに、ウェイターはうやうやしくワインをワゴンで運んできて、丁重に栓を抜き、味見しろと勧めてきて気恥ずかしかった。
「グッド?」ウェイターは満足そうに去っていった。
窓越しには滑走路が見え、その向こうに黄緑色のなだらかな丘がどこまでも連なり、その先の地平線は桃色に染まろうとしている。
刻一刻と色調が変化する西の空を眺めながらの夕食はなかなか贅沢なひとときだった。
これで美しい恋人が真向かいに座っていれば文句のつけようがない。
あいにく真向かいに座る男は、ラグビーで例えるなら一番前列でスクラムを組んでいそうな体

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