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アノボセリの草原
アノボセリの草原

タイトル  アノボセリの草原
目的地 アフリカ・中東 > ケニア > その他の都市
場所 アノボセリ
時期 1998 年 9 月
種類 景色
コメント さて、動物のサファリである。
前方にはSがさきほど指摘した、ジープがずらりと整列していた。
どうやら大物(?)を発見したようだ。
どこから集まったのかと思えるくらいの何十台もジープが轍に一列になって駐車し、しかも整然とはほど遠い、正月の福袋の奪い合いのような様相である。
「ライオンがいた」らしい。
発見者であるガイドたちにもそれぞれグループがあり、サファリをしながらお互い無線連絡を取り合うらしい。獲物をゲットしたら即連絡を入れる算段だ。
いかに「動物をより多く、効率的に観光客に見せるか」が彼らの腕のみせどころなのだ。
各々のグループは得意のテリトリーがあるらしく、同じコースをすべての車が走るわけではないので、同日同時刻であっても、ライオンを見られないグループもあるわけだ。
我らがガイド、パトリックの眼力はいかに?視力は驚異的な6・0らしいが(!)、「アフリカでは当たり前」なのだそうである。
同じグループにしか知らせてないつもりでも、神奈川県ほどの狭い(?)面積のアンボセリ公園である。
おのずと、1匹のライオンに何十台ものジープが集まるのである。
「ほらね?おもしろいでしょ、人間観察」
私はMに笑ってみせたが、Mの目つきが変わっているばかりか、興奮しているのか充血している。
問えば、「寝不足やねん」らしい(笑)。
「ライオン1号ゲット!でも見えへんな〜〜」
Mは高感度の双眼鏡を持っている。
「おっ!双眼鏡持ってるやん。どしたん?わざわざ買うたん?」
「ううん、弟のや。なんや、友だちと北海道行くときに買うたいうてた。せや、馬を見に行ってん」
「北海道へ馬を・・・・・・。ふーん、兄弟で動物好きなんだね」
「贔屓の馬舎があるいうてた」
「なんやっ!競馬ファンかいっ(爆笑)」
「どうやら、つがい、みたいですよ。メスが寝そべっているでしょ?その岩の背後にほら、オスがいるでしょう?」
私たちよりパトリックのほうが、よっぽど流暢な日本語で教えてくれた。
 保護区や国立公園は、どこでも車を乗り入れることができるわけではない。
どの公園も動物保護レインジャーたちが使う、決まったコースがある。
動物たちが生きていく糧、である草を守るためである。それは、生態系のバランスを保持してもくろみがあるのはもちろんのこと。
動物めがけて草原を突っ走ろうものなら、おとがめ、罰金どころか外国人でも禁固刑がありうるらしい。
しかし、たまに不埒なガイドに当たると、方向を見失ってしまい、迷子になることもあるらしい。
もちろん、密猟者たちはお構いなしであろう。
植民地時代以降、高く売買されるサイの角や象牙を求めて密狩が跡を絶たない。
飢饉にあえぐアフリカの民たちが生活の糧とばかりに手引きしたり、商売に手を染めるという側面ももちろんあろうし、一面のみでは解決できない構造的問題があるような気がする。
ゾウは自然のままにまかせていても、生きていく、のが困難らしい。
温暖化の影響をもろに受けて、年々、アフリカの赤道あたりも砂漠化が確実に進行しており、彼らの食糧も減っている。
しかも、ゾウは雑食で、草という草を食べ、木という木をなぎ倒していく。
すると、アカシアしか食べないキリンをはじめ他の草食動物が絶滅の危機に瀕し、ゾウも自らの乱食がたたり、自らの命も種の保存も危うくしてしまっている。
草食動物が少なくなると、当然、肉食動物の生命にも影響する。
種の保存のために人間が介在する功罪はともかくとして、ジンバブエなどでは、ゾウの種を守るためもあり間引きされるらしい。
ケニアは法律で禁じられている。
したがって、ケニアでは遠からずジンバブエよりも早く、ゾウなどの大型動物は絶滅する、と断言する科学者もいる。
しかし、いかなる理由であれ、規約にある動物を商品として扱うことをワシントン条約は禁じている。
アフリカ諸国政府も悩めるところであるが、どうであろう。
それはそうと、サイの角なんか何にも効用なんかないのですよ。
「自然が一番。ライオンが遠くて見えなくても、これも自然のうち」
「なんや、ガクちゃん、物分りのよさそうなこというて」
「はい、いいですか?次、行きますよ」パトリックは妙に元気になって、フランクに発車を命じた。
車はネコちゃんたち1号車と離れ、ロッジ周辺のオルトカイ地区から昨日、ナマンガゲートから来た道を逆に走りはじめ、やがて本道をはずれ、細い右の道を進んだ。

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