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マサイマラのライオン
マサイマラのライオン

タイトル  マサイマラのライオン
目的地 アフリカ・中東 > ケニア > マサイマラ
場所 マサイマラ
時期 1998 年 9 月
種類 景色
コメント ねぇ、このロッジの部屋はどっちでした?」
Yがやおら文庫本から目を離し、私に問うた。
「ロッジって?他になにかあるの?」
今しがたマサイ村からここに到着したばかりの私は、かなり遅めになった昼食を早々に切り上げここにいたのだ。
パトリックの姿がみあたらず、まだチェックインしてないままロッジ内を散策していたので、意味がよく飲み込めなかった。
「コテージとテント式があるのよ。設備は同じだから、断然テント式のほうが風情があってお勧めよ」
「頼んでみたらいいんじゃない?」再び黒いサングラスをかけたOが追従する。
最初、私はOをオバケのQ太郎のフウコとよく似ていると内心思っていたのだが、よく見れば、彼女がもう少しだまっていれば(笑)、Oもなかなかキュートな美人だった。体つきがYとそっくりなところも色白なところも・・・・・。OとYは二卵性の(笑)、双子のようだった。
 私はYたちの忠告に従い、レストランへとって返し、パトリックをつかまえ、コテージ式のロッジからテント式に変更が効かないか尋ねてみた。
「変更は効かないが、私はテントのほうなので交換してあげられます」パトリックは喜んで申し出た。
私以外のメンバーはプール近くに部屋があるようだったが、私のロッジはレストランなどがある本館から一番遠い区域にあった。
パトリックが喜ぶはずだ。
マラ川の支流であるクレタ川のほとりに面して建っていた。
テントのジッパーを開けると、ベッド、シャワー室、トイレなどが完備あれており、Yのいう「設備は同じ」が理解できた。テントを囲む木組みの屋根があった。
テントに木枠?
折角のワイルドさが台無しのような気がしたが、夜になるとわかる―――。
夜行性のさまざまな、たとえばサバンナモンキーたちがテントの上を徘徊してうるさいことなんの。
木枠がしているため、まだしも振動は和らいでいたが、それでもテントの布のうえを歩かれたらうるさくて眠れたものではなかった。
パトリックが喜んでいた顔が目に浮かぶ。
まだある。
ここは川の近くである。カバの行動観察にはもってこいだが、夜、カバが鳴き声あげるのを聞いたことがありますか?眠れるひとは尊敬します―――――。
 テントの出入り口のジッパーであるが、防虫用のシートと二重になっている。私は外出時にジッパーを最後まで閉めるコツを最後まで覚えきれなかった。
そして、ここも鍵がないことが難点だった。
テントの外には4畳半ほどのスペースに木のテラスがあり、専用のテーブルと椅子がある。
ここでYのように文庫本を取り出して、Yとは違い(笑い)、残り少なくなったウィスキーを傾けるのだ。
 これまで、各公園内のロッジはアバーディアの「趣のある部屋」も含めて、概ね快適ライフを過ごすことができた。
夜が深まると、自家発電のロッジ内すべての照明が消え、平原との堺なく闇に染まり、懐中電灯の頼りない光のもとで、シンと静まりかえった部屋に、どこからともなく獣の雄たけびが届く。
夜のロッジもまた、音色のサファリを堪能できるのだ。
カバはもうこりごり、だけど――――。
マサイ・マラでのサファリはMに告げたように、これまでのサファリの総括のような趣であった。
望めば、どんな動物も観察可能なのである。
それよりも私は、1週間、このロッジ生活がいたく気に入っていた。
なんといってもサファリ中は「ちょっと歯ブラシを買いに町へ」、なんてことができないのだから、人口と遮断された、いながらの自然、この「贅沢で優雅なロッジ生活」を満喫しない点はない。
いかに有意義に過ごすかが、サファリの「価値」さえも左右するように思えてならない。
私は日中の暑い盛り、ほとんどプールにいた。もう少し詳しく述べると、「プールサイド」にいた(笑)。
パトリックにはとうていなれないが、Mに言わせると日々、「パトリックに近づいていた」(笑)。
 テントでしばらく過ごしたあと、海水パンツに履き替え、再びプールに向かった。
YとOの姿はもうなかった。
一組の白人家族だけが水遊びをしていた。夫婦と小さな女の子二人。
日中はどこのロッジでも、ほとんどひとをみかけなかった。
ケニヤに多く訪れる西欧人は日中もサファリをするらしい。日本人と逆のような気がしておかしかった。
ちょうど、私の娘二人と同じ年頃の女の子たちは、お父さんから悪戯そうに水をかけられ、黄色い歓声をあげていた。
その光景をプールの反対側のチェアーに座り、ビールを飲みながら、微笑ましく眺めていた。
どうしても、遥か数万キロ離れた「異国の地」のことを思い起こさずにはいられない―――。
――みんな元気にしてますか。
パパはアフリカでお仕事がんばっています――
ナイロビで出したあのハガキは、きっと私の帰国後に届くだろう。
それを私から二人に読み聞かせてあげよう。
そうだ、ニエリでだした、もう一枚があった・・・・・・・・・・。



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