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タイトル
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夜のマサイ
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目的地 |
アフリカ・中東 > ケニア > マサイマラ
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場所 |
マサイマラ |
時期 |
1998 年 9 月 |
種類 |
景色 |
コメント |
プールサイドはだんだん賑やかになってきた。 イタリア軍団のおでましである。 アンボセリ、アバーディア、ナクル、そしてマサイ・マラまで、ずっと視線の追っかけ(笑い)をしていた、イタリアのオネエサンがついにベールを脱いだというか、グラマラスな肢体をプールの水面に映していた。 その彼女を取り巻くように、仲間の男たちが、ここをローマだかナポリだかの喧騒の町に豹変させてくれるのだった。 何もすることのない、優雅なロッジ生活。 チビが久方に声をかけてきた。 「今朝、いくつものバルーンが昇ってましたよ。みかけなかったですよね?乗らなかったんですか?」 マサイ・マラはケニアでは唯一空からサファリを楽しめる動物保護区だ。 アンボセリからニエリに向かう雨の道中、私はMに誘われたが、きっぱり断ってあった。 早朝日の出前にバルーンを上げ、観光客は朝日のご来光を崇め、下界の動物たちを俯瞰する。 そして、風と火加減により調整しながら、約2時間のフライトを終え、着地する。 バルーンをひたすら追いかけてきたワゴン車のスタッフが朝食の準備を整え準備万端、降り立った場所でシャンパンつきの英国風朝食が待っている趣向だ。 なんだか、貴族趣味のようなオプション・ツアーである。気に食わない、というかもちろん、高所恐怖症とあまりにも高すぎる料金が敬遠させたのはいうまでもない。 私以外のメンバーはそのバルーンを楽しんできたはずだ。 「風に随分流されたのか、えらく遠くまで行ってしまっちゃったみたいで、ロッジに着いたのが、11時前でした。乗らなかったんですよね?」ノッポが淡々と、付け加える。 私はバルーンなど全然興味ない! 「朝食のとき、すぐそばでキリンがいたのは感動もんだったですよ!」とチビ。 彼らが絶賛する空のサファリ。私はほとんど相槌を打ちながら聞き流していた。 私はただ一つ興味があった質問をした。 「で・・・・・・・?その、朝食時・・・・シャンパンは何本でた?」
バルーンサファリは参加しなかったが、ナイト・サファリには参加した。 その値段、法外か否か判断しがたい50ドル。 ナイロビ郊外で私が原因で夕食がお大幅に遅れたことを、その原因を知らないまま「ブータレテタ」 新婚組の男が(なんと、彼までもマサイ・マラで合流だ)こう言ってた。 「ヒョウ、間近に見れたっすよ!いやー!スゲーかったっすよ!」 そういうわけで、さしてなごりおしくもない、初日で飽きていたサファリを締めくくることに。 「レッツラゴー!」 しかし、威勢がよかったのは出発からものの十数分であった。 天井のない、軍用風トラックに乗り込み、ガイドがサーチライトを照らしながら進み、夜の動物の生態を観察するわけだが、記憶にあるかぎり「見た」のは、うさぎの耳をして豚のようなツチブタが草むらをノコノコ這う姿と、カンガルーのように飛び跳ねるその名もトビウサギだけだった。 「あれ?なんでここにピカチューがいるの?」 記憶はここで遮断された。 無理もない。この日まで、いつもの旅の流儀と同じく、ほとんど寝ずに夜を謳歌し、また移動中ですら、車窓の景色も決して見逃すまいと、眠らずに通してきたのだ。 旅にでる、いつもの私のスタイルだ。 ――夜に喰われないようにね――。アフリカの神話の話を思い起こす。 夜の冷気にジャンパーでも凌げず、目を覚ます。 空を見上げると満天の星。 東方向の地平線に凍りつくような、最も光輝く星を、隣にいる物知りのHに尋ねた。 「あれ、金星?」 「木星よ!」間髪入れず、後ろから声がした。声の主、が誰かはもう言わないけどね。 再び眠りに落ちた―――――。 そして、再び目が醒めた。 目が醒めたのは、我慢しようのない自然の摂理からであった。 「もしもし、トイレない?」サバンナのど真ん中でトイレもへったくれもあったものじゃないが、私は限界という境界線を越えていた。 ガイドは「はぁ?」という顔をした。 私は、我慢の限界から、闇夜のサバンナで大きな声をださすにはいられなかった。 「トイレ!!」 ガイドがトラックからまず降りて、サーチライトを四方八方照らし、猛獣がいないかを確認する。 そして、私はトラック側面の梯子を降りるように指示された。 私は慌てて、トラックの後部に回る。 ダムが決壊したような溢れだす洪水に自らが驚きながら、気を紛らわすために空を見上げた。 ハミングが自然にでた。 「♪上を向〜〜いて、歩こう〜〜〜っ。星のぉ〜〜」やあ、降り注ぐ星の数々。 その時だった。 すぐ近くで「ワォ〜ン」と遠吠えする声に一瞬、洪水はせき止められた。 身震いしながら、再び栓の蛇口をひねったが、どうにもいうことが効かなかった。 「ワォォ〜〜ン、ワォォ〜〜ンッ」 最後のサファリ。 挨拶をしてくれたのは、ジャッカルたちだった――――。
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