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タイトル
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フォワグラのトルティーヤ
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目的地 |
日本・アジア > 日本 > 東京都
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場所 |
丸の内 |
時期 |
2004 年 2 月 |
種類 |
食べ物 |
コメント |
すべてがはじまる「場所」を あなたはいくつもちえてますか? by まるくん みんなへ
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生暖かい風に包まれて、少し汗ばむくらいの季節。 Aさんと東京駅からすぐのビルに向かう。 一時期取り壊しが問題されたステーションビルはそのままの佇まいだ。 いつの時代であっても古い様式はロマンではなく邂逅だ。 いつもなにかをそっと教えてくれる。 しかし、変わったのは「こちら側」だ。 最後の東京駅からもう15年の歳月が経つ―――。 過客は悲しいかな、想いは幽霊のように私のなかで彷徨うのではなく、私のなかにいまだに元気に生き続けている。 最後の東京駅から一年後の14年前の、あの日、あの「知った瞬間」から何度も枕を濡らした。 毎夜のように世界を呪った。なにもしたくなかった。 何者にもなりたくなかった。 必ず週2回届いていた葉書や封書から,ある日を境に劇的に変わった手紙群を恨んだ。 たとえ、それがどこかの誰か、あるいは身内の私への精一杯の愛情であったとしても。 彼女は旅立つ前に妹にもらしたのかもしれない。 「私が彼がいないと生きていけないように、彼も私がいないときっと生きてはいけないから―――」 矮星以上に絶対光度の届かない二つの魂はかくも無残に、光を、彼我を、切り離されたのだ。 しかし、私は彼女と「違い」生きている。 空いびきのような虫篭に身をまとったまま、無辜な生命をないがしろにしつつ、日々を過ごしていた。 最後に笑顔をみたのがここだった。 またお互いがお互いの世界に戻る前のお互いを荷担しつつ、―――。 「ライトアップされてるとこで、まるくん撮りましょうか」 Aさんは、しなやかに首をもたげてそよ風のように微笑み囁いた。 「うん、、、また帰るときでいいんじゃない」我に還る。 「それよか、急ごうよ、おなかすいただろ?ご馳走が君を待っている」 「はいはい、、、たくさん食べますよ〜〜」 漆黒の闇のなかで、Aさんのかすかな吐息が春のおとどめに消え入るように空気に交じり合った。
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