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砂漠のど真ん中
砂漠のど真ん中

タイトル  砂漠のど真ん中
目的地 アフリカ・中東 > その他の国・地域 > その他の都市
場所 ルブアルハリ砂漠
時期 1996 年 5 月
種類 景色
コメント 持参したミネラルウォーターはすでに熱湯だ。
しかも、水はさきほどの2回のアリの油まみれの洗浄に使い果たしていた。
おいおい、洒落にならない。
私たちは相談して、本当に幸いなことに3号車に積んであった「全員分の昼食用のミネラルウォーター」(笑)に手をつけることにした。
 砂漠の真中で無為で孤独で熱さに耐えかねない時間が過ぎていった。
アリはピクリとも動かない。
仲間の車が戻るのを待つ、しか手の施しようがないからである。
「あっ、車が来た」地平線から砂煙が近づいてきた。
しかし、近づきつつある車は、私たちのランドクルーザーではなく紺色のトラックだ。
トラックは私たちの車と距離を置いて停車した。
見覚えのない男が二人降りてきた。
二人ともライフル銃を手にしている・・・・・・・・・。
何を想像したかは、私の強張った顔でわかりますか?
「――次の日のハドラマウト砂漠抜ける道、ベリィ危険ね。いくつかの部族が山賊化してるね。観光客は特に狙われやすいね。ルブアルハリ砂漠は砂だけで何もないとこね。この砂漠で道を間違えると特に狙われるね。武装した山賊の格好の餌食ね――」
また、ナジプサの声がこだまする。走馬灯のように駆け巡るのは家族たちの顔。
絶体絶命のピンチに思い浮かべるのが最愛のひと――とよくいわれるが、そのてんは安堵した(笑)。
カバンからリアル紙幣の束を渡してなんとか勘弁してもらおう、と頭の中でもたげていた。
しかし、すぐそこまで近づいてきた二人はライフルをアリの車に預け、呆然としているアリに向かい、両手を広げてなにやら罵っている。
「彼らは砂漠ルートの案内人のベドウィンだ」誰かが言った。
―え?なんだ・・・・もっとはやく言ってよ―
彼らは砂漠ルートのスペシャリストのベドウィンらしい。
ツアー社のガイドたちも360°視界が利くなかでは進行方向も誤るのは無理もなく、後で聞いた話だが、彼らは山賊対策でもあるらしい。
彼らは一部山賊化している部族の出身なのだそうである。
二人のベドウィンは「なんでお前の車ばかりやねん」とあきれかえっていた様子だ。
ベドウィンの車は、恐らくナジプサの指示により、四輪駆動用のタイヤを運びに戻ってきたのだ。
ベドウィンの手助けを受けながら今度は前輪のタイヤを交換するそばで、私たちはライフル銃を手にとり、ベドウィンのトラックで発見した旧式の手りゅう弾(!)を手にして、なごやかな砂漠での撮影会に様変わりしていた。
 3度目の修理も終わった。
交換されたタイヤはインドネシア製でまったく溝がないタイヤが装着されており、私たちは顔を見合わせて、しかし誰も口にはしなかった。
―また、パンクするわ・・・・・―
みんな、そう感じたに違いない。
大砂丘を前にして、恐々とした心境で、もうはしゃぐ気にもならなかった―――。
 なんとか、先行の一団に追いついた。
追いついたというと聞こえがいいが・・・・・・・・。
「もう1時間も待ってんねんで。皆でアンタのこと何言うてたか知ってる?(笑)」
大阪のおばちゃんに悪態つかれた。
みんなは小高い砂丘を写真に収めていた。
「なんであんな、児童公園の砂場みたいなの写真に撮ってるの?」
「今年は、風の影響で砂丘は流されてて・・・ない!んだって」
「えええええっ?!」
ガーンと、法隆寺の鐘が鳴る、心境だった。
私は、泣く泣く砂粒をかき集めて、空のペットボトルに詰め込んだ。
敗戦チームが、オラが故郷に土を持ち帰る、の図である。
こんな哀れな私のもとにアリがやってきて、私をなぐさめてくれた(笑)。
「水を撒いて、ほら乾く前に入れると早いよ」
そう誇らしげに辺りペットボトルから水を撒いた。
ああ、貴重な飲料水が・・・・・あんたの運転技術のおかげであやうく飲み水がなくなるとこだったというのに・・・・・
―こいつは完全に砂漠をなめとる(笑)―

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